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病気や怪我の後遺症を理由に解雇されたら?

長い人生、予測し得ないような病気を発症したり、不慮の事故によって後遺症を負ったりすることも少なくありません。

そして、病気や怪我の後遺症で身体が不自由になった場合、その程度によっては仕事をすることにも影響が出てくることもあるでしょう。

そんな場合に一番不安なのが、病気や怪我の後遺症を理由に会社を解雇されることです。

普通の会社であれば職務内容を軽減したり、場合によっては配置転換や出向などを行って病気や怪我の影響があっても継続して働けるよう何らかの対処をしてくれるかもしれませんが、ブラックな会社では即座に解雇されてしまうというような場合もあるでしょう。

そこで今回は、病気や怪我の後遺症を理由に解雇することは認められるのか、またそのような理由で解雇された場合の対処法などについて考えてみることにいたしましょう。

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「他の業務で働くことができるか」という点が重要

病気や怪我の後遺症でそれまで従事していた職務に就くことができない場合であっても、その他の業務なら問題なく働くことができる場合があります。

たとえば、建築会社で現場での作業はできなくなったが事務所内での事務作業であれば問題なく働くことができるとか、外食関係の会社で調理の仕事はできなくなったが営業の仕事なら問題なくできるなどといった場合が代表的です。

このように、従前の仕事はできないけれども他の職務であれば働くことが出来るというような場合には、たとえ病気や怪我の後遺症で従前の仕事ができなくなった場合であっても、その雇われている会社で働くこと自体は可能であるということができます。

そのため、使用者(会社・雇い主)は労働者(社員・従業員)に対して、他の従事できそうな仕事を与える必要がありますし、また労働者の方も使用者に対して他の仕事であれば働くことができるということを伝える必要があります。

「他の業務でなら働くことができます」と申告することが必要

使用者(会社・雇い主)と労働者(社員・従業員)の間で結ばれる労働契約(雇用契約)は、使用者が仕事を提供し、労働者はその提供された仕事を行って給料をもらうという契約になります。

そのため、もし病気や怪我の後遺症でそれまで従事していた業務に従事できなくなった場合には、使用者に対して、「他の職種であれば働くことができます」と労働者の側から申告する必要があります。

なぜなら、後遺症でそれまで就いていた職務に従事できなくなった場合には、労働者として「働く」という義務を果たしていないことになり、そのままの状態では会社との間の労働契約上の義務を果たしていないことになるからです。

しかし、労働者が「他の職種であれば働くことができる」と申告した場合には、労働者の側としては「働く意思がある」ということを表明することになり、労働契約上の「働く」という義務を拒否しているわけではないということになります。

たとえば、前述の例で建築会社の現場業務をしていた者がその業務に従事することができなくなった場合には、「事務所内での事務仕事なら問題なく働くことができます」などと申し出なければなりません。

このような申し出をしておくことで、会社から「働くことができなくなったからやむを得ず解雇した」と主張されるのを防ぐことができます。

使用者は、労働者からの他の業務で働くことができるという申し出を断ることはできない

使用者(会社・雇い主)は、けがや病気の影響で従前の仕事ができなくなった労働者(社員・従業員)から別の業務で働きたいという申し出があった場合には、これを断ることはできません。

なぜなら、使用者と労働者の間で結ばれる労働契約(雇用契約)は、使用者が仕事を提供し、労働者はその提供された仕事を行って給料をもらうという契約になりますから、使用者は労働者が仕事を行うことができる限り仕事を提供しなければならないという義務を負っているからです。

労働者が労働をすることができるにもかかわらず、使用者が仕事を提供しない場合は、使用者は「労働契約(雇用契約)の契約違反」となってしまいます。

そのため、たとえ労働者が病気や怪我の影響で従前の仕事ができなくなった場合でも、その労働者が他の業務でなら働くことができると申し出た場合には、その申し出を拒否することはできず他の仕事を提供しなければならないことになります。

【注意】
ただし、入社時の雇用契約で職種が特定されている場合は、病気や怪我の後遺症を理由とした解雇も認められる可能性があります。たとえば職種をトラック運転手と特定して採用された労働者が病気や怪我の後遺症でトラックに乗れなくなったような場合には、「トラックに乗る」という「労働契約上の義務」を果たすことができなくなるので、会社側が解雇することも認められる可能性がありますので注意が必要です(カントラ事件・大阪高裁平成14年6月19日)。

病気や怪我の後遺症を理由とした解雇は「無効」

前述したように、病気や怪我の後遺症で従前の仕事ができなくなった場合であっても、労働契約(雇用契約)上職種が特定されておらず、他の業務であれば働くことができ、かつ、他の業務ができるということを使用者に申告している場合には、使用者は他の業務を与えて働かせなければなりません。

参考判例:片山組事件(最高裁平成10年4月9日)

そのため、もしこのような状況で使用者から解雇された場合には、その解雇は無効となりますから、会社に対して解雇を撤回するよう要求することができます。

病気や怪我の後遺症を理由に解雇されるのを防ぐための方法と解雇された場合の対処法

「他の業務なら働くことが可能です」と会社に申告する

前述したとおり、病気や怪我の後遺症で従前の仕事ができなくなったとしても、職種を特定して採用された場合でない限り、会社はその労働者ができそうな仕事を提供しなければなりません。

そして、労働者も会社に対して他の職種なら働くことができるということを表明しなければ労働契約上の義務を果たしているということはできませんから、使用者に対して「他の業務なら働くことができます」と申告しておかなければなりません。

そのため、たとえば建築現場の監督業務に従事していた労働者が病気や怪我の後遺症で現場に出ることができなくなった場合には、「事務職なら大丈夫です」とか「営業なら出来ると思います」など他の仕事であれば従事することが可能であることを使用者に伝える必要があります。

解雇の無効・撤回を求める通知書を送付する

使用者に対して他の業務であれば働くことができると申告していたにもかかわらず、会社から病気や怪我の後遺症を理由に解雇された場合には、その解雇は法律上無効と言えますから、使用者に対してその解雇が無効であることを主張し、併せてその解雇を撤回するよう要請する必要があります。

会社に対して解雇の撤回を求める場合は、後で裁判となった際に証拠として提出できるよう書面を作成し内容証明郵便で郵送する方が無難です。

解雇の無効・撤回通知書【ひな形・書式】

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弁護士など法律専門家に相談する

撤回を求める書面を郵送しても会社側が解雇を撤回しない場合は、早めに弁護士などの法律専門家に相談した方が無難です。

労働契約(雇用契約)で職種が特定されていない労働者が、他の職種への配置転換など適切な処遇を与えられることなく、病気や怪我の後遺症を理由に解雇された場合は、個別の事案にもよりますがその解雇が無効と判断される可能性は高いです。

そのため、早めに弁護士などの法律専門家に相談し、最善の対処がとれるようアドバイスを受けることをお勧めします。

解雇
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