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不況や経営悪化を理由とする内定取消に関する労働局の援助申立書

このページでは、不況や経営状況の悪化を理由に内定先の企業から内定取り消しを受けた場合に、その取り消しを行った企業に対して内定や内々定の取り消しの撤回(無効)を求めるため労働局に紛争解決援助の申立をする場合の申立書の記載例(ひな形・書式)を公開しています。

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なお、この書式例(ひな形例)は当サイト管理人が個人的な見解で作成したものです。

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不況や経営状況の悪化を理由に内定や内々定を取り消された場合に、その撤回を求めるため労働局に紛争解決援助の申立を行う場合の申立書の記載例


〇〇労働局長 殿

個別労働関係紛争の解決に関する援助申立書
(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条に基づく)

平成〇年〇月〇日

申立人(労働者)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
住所 広島市中区〇〇町〇番〇号
氏名 弥東野夜芽香
電話番号 080-****-****

被申立人(事業主)
〒 〇〇〇-〇〇〇〇
所在地 東京都千代田区赤坂〇丁目〇番〇号〇〇ビル46F
名称 株式会社ボシュ―&クビニー
代表者 右潟沙雅理
電話番号 03-****-****

1 紛争解決の援助を求める事項

内定の取り消しを撤回するよう事業主に対する助言・指導を求める。

2 援助を求める理由

 被申立人は、太った鳩の糞公害を事前予測するスマートフォン向け緊急鳩受信システム「ポポポッポポー」を開発・配信する従業員821人の株式会社であり、平成24年2月に東証マザーズに上場している。
 申立人は、フィンランド民謡大学広島校に通う大学生(4年)であり、平成〇年〇月、被申立人の本社で行われた採用試験を受験し、同年〇月〇日付の採用内定通知書によって被申立人から採用内定の通知を受けたが、同年○月○日付内定取消通知書により「不況による経営状況の悪化により今期の採用を中止した」との理由で当該内定を一方的に取り消された。
 しかしながら、採用内定は「解約権留保付きの労働契約」であり、内定を取消す場合にはその取消事由が客観的に合理的であり社会通念上相当と認められない限り解雇権の濫用として無効になるものである(大日本印刷事件・最高裁昭和54年7月20日判決に同旨)。
 この点、仮に被申立人において不況による経営状況の悪化が生じているとしても、その原因は景気動向の判断を誤り甘い見通しのまま経営を続けてきた被申立人にあるのであって、何の落ち度もない申立人が内定の取消を受けなければならない客観的合理的理由はなく、またその経営状況の悪化による不利益を内定取消として申立人に転嫁することは社会通念上相当ともいえないはずである。
 また、仮に被申立人において内定取消が必要であったとしても、事業主が内定を取り消す場合にはそれを防止するため最大限の経営努力を行う等あらゆる手段を講ずる必要があり(厚生労働省指針「新規学校卒業者の採用に関する指針」参照)、また内定が解雇権留保付きの労働契約であることを考えれば内定の取消が適法となるためには「人員削減の必要性」「解雇回避努力義務」「人選の適合性」「説明協議義務」の4つの要件(いわゆる整理解雇の4要件)を満たすことが必要であるところ、被申立人においてそのような経営努力が行われた形跡はなく、申立人が被申立人から内定取消に関する説明や協議を受けた事実も一切ないから、被申立人の行った内定取消に客観的合理的な理由はなく社会通念上相当とも言えない。
 よって、被申立人が申立人に対して行った内定の取り消しは、解雇権の濫用として無効である。

3 紛争の経過

 申立人は被申立人に対して、採用内定の取消理由について、客観的・合理的な理由がなく社会通念上相当でないことをモバメールで説明し、また、平成〇年〇月〇日付で作成した「内定取消の無効・撤回を求める申入書」を被申立人に郵送する方法で内定取消の撤回を求めたが、現在に至るまで内定取消の撤回は行われていない。

4 添付資料

・内定通知書の写し 1通
・内定取消通知書の写し 1通
・内定取消の無効・撤回を求める申入書の写し 1通

以上


※官公庁ではすべての書類をA4で統一していますので、プリントアウトする際はA4用紙を利用するようにしてください。

※「援助を求める理由」の欄について

援助を求める理由の欄には、会社側がどのような法律違反行為を起こしていて、どのような解決方法を求めているのか、といったことを記載します。

上記の事例では、内定の取り消しは「解約権留保付きの労働契約」であって解雇に準じるものであり、たとえ内定取消事由が生じたとしてもその取消事由が客観的合理的で社会通念上相当と認められない限りその内定の取り消しは権利の濫用として無効になるという最高裁判所の判例と、事業主は採用内定の取消しを防止するため最大限の経営努力をすべきとする厚生労働省の指針を根拠として、会社が行った内定取消に客観的合理的な理由がなく社会通念上相当とも言えないとして無効と主張する文章にしています。

なお、この点の具体的な問題点はこちらのページで詳細に解説していますので参考にしてください。

▶ 不況や経営環境の悪化を理由に内定を取り消された場合

※「紛争の経緯」の欄について

紛争の経緯の欄には、会社との間に発生した紛争がどのようなきっかけで発生し、会社とどのような交渉を行ってきたのか、ということを記載します。

上記の事例では、内定を受けた会社から一方的に内定の取消通知を受け取った後、内定取り消しの撤回を求めて会社に電子メールで説明するとともに、内定取り消しの撤回を求める申入書を送付したものの会社が内定取消の撤回に応じていないということを記載しています。

※「添付書類」の欄について

添付書類の欄には、会社との間で発生している紛争の内容を証明するような資料があれば、その資料を記載します。

上記の事例では、「内定を受けたこと」を明らかにするために内定通知書の写し(コピー)を、また「内定が取り消されたこと」および「内定取消事由が不況による経営状況の悪化という企業側に過失のある事由であること」を明らかとするために内定取消通知書の写し(コピー)を、「内定取り消しの撤回を求めたこと」を明らかとするために内定取消の撤回を求める申入書の写し(コピー)を添付することにしています。

なお、内定取消の撤回を求める申入書の記載例についてはこちらのページで解説していますので参考にしてください。

▶ 不況や経営状況の悪化を理由とする内定取消の撤回を求める申入書

もっとも、裁判所の裁判とは異なり、労働局に対する紛争解決援助は証拠書類の添付がなくても申立することが出来ますので、添付できる書類がない場合は添付書類の欄に「なし」と記載し何も添付することなく申立書を作成しても問題ありません。

(※なお「写し」を添付するのは後で裁判などに発展した際に「原本」を使用することがあるからです。労働局への申立に証拠の原本は特に必要ありませんから、提出する書類(又はデータ)のコピーを取って、そのコピー(写し)を提出する方が無難です。)

様式について

労働局に対する援助の申立書に定型の様式は設けられておらず、各都道府県の労働局によってその様式が異なっているようです。

上記の様式で提出しても問題ないと思いますが、たとえば東京労働局で使用されている申立書の様式は東京労働局のサイトからダウンロード(Word)できますので、その様式を使用して提出するのもいいのではないかと思います(東京労働局で使用されている様式を他の労働局で使用しても受け付けてもらえると思います)。

様式 | 東京労働局

もっとも、実際に労働局に対して援助の申立書を提出する場合は、申し立てを行う労働局に事前連絡や相談を行う場合が多いと思いますので、その相談する際に労働局で申立書のひな形をもらうなどした方が良いでしょう。