AV出演を強要する契約を解除(取消)する方法

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

7f1c189daa3464c83123a15117ccafd3_s

社会問題化しつつあるAVへの出演を強制させる人権侵害の問題ですが、事件の性質上、潜在的な被害者の数は想像しているよりも遥かに多いのではないかと思います。

このAVへの出演を強制させる問題が表面化してこなかった要因としては、性的な性質を有していることから被害者が声を挙げにくかったという点がまず考えられますが、プロダクションやの制作会社などと被害者となっている女性の間で結ばれた契約が特殊で消費者法や労働法など社会的弱者の救済を目的とした法律による解決が難しかったという側面もあるのではないかと思われます。

もっとも、仮に被害者の女性とプロダクションや制作会社との間で結ばれた契約が”形式的”には消費者法や労働法の枠組みに含まれないものであったとしても、被害者とプロダクション(または制作会社)との関係性などを考慮すれば”実質的”には消費者法や労働法といった法律を適用して解決できる事例もあるのではないかと考えられます。

そこで今回は、AVへの出演を強制させる契約を結ばされるなどして自分の意思に反してAVやわいせつなビデオ(動画)などへの出演を迫られている(または出演させられている)女性被害者が、そのプロダクション等などとの契約を解除(又は取り消す)するにはどのような方法があるか、という点について考えてみることにいたしましょう。

なお、このページにレポートする内容はあくまでもこのサイトの管理人の個人的な見解に基づくものに過ぎませんので、実際にAVへの出演を強制させられている被害者の方がプロダクションやAV制作会社に対して契約の解除や取消を通知する場合は弁護士に事前に相談することをお勧めいたします(このページの最後に相談先のリンクを張っています)。

スポンサーリンク

1. 被害女性が未成年の場合

もし、プロダクションや制作会社からAVへの出演を強制させられているのが未成年者の場合には、そのプロダクションや制作会社との契約は「未成年者の法律行為」として取り消すことができると考えて間違いありません(※1)。

なぜなら、民法という法律には、未成年者(20歳に達しない人)が何らかの「契約」をする場合には、親(父・母)などの親権者(法定代理人)の同意を得ることが必要であり、その同意がないまま未成年者が契約してしまった場合にはその契約を取消すことができると規定されているからです(民法第5条1項ないし2項)。

【民法第5条】

第1項 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。(但書省略)
第2項 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
第3項 (省略)

悪質なプロダクションや制作会社が”未成年の女性”をスカウトする場合、その女性の親の同意を取ることはまずありません。常識的に考えて自分の子供がAVに出演させられるような契約に同意するような親はいないからです。

親に連絡されてしまうと契約を結ぶことができませんから、このような悪質なプロダクションや制作会社は親に内緒で契約を結ばせるのです。

そのため、未成年の女性がプロダクションや制作会社から「契約したんだから出演しろ」とか「出演を拒否するなら契約違反として違約金を請求するぞ」と脅迫を受けたとしても、そのような契約は「未成年者の契約」として無条件に一方的に取り消すことができますので何も心配することはないでしょう。

過去の裁判例でも、AVへの出演を強制された女性が契約を解除(取消)した事案で、成年に達する前のプロダクションとの契約を親の同意がないことを理由として未成年者による法律行為を根拠とした取り消しを有効と判断したものがあります(※1)。

2. 20歳を超えているが契約当初は未成年であった場合

AVへの出演を強制させられている女性が成人(20歳以上)に達していたとしても、そのAV出演に関係する契約を結んだのが20歳になる前であり、かつ親(法定代理人)の同意を得ていない場合であれば、前述の「1.」で説明したのと同様に「未成年者の法律行為」として取り消すことが可能です(※1)。

たとえば、19歳の時にスカウトされてプロダクションや制作会社に10本のAVに出演するというような契約を結ばされた場合に、仮にプロダクションや制作会社の要求を断りきれずに20歳になるまでの間に10本のうちの1本に出演したとしても、20歳の誕生日を迎えた後にプロダクションや制作会社との間で未成年の時に結んだ契約を「未成年者の法律行為」として取消して残り9本のAVに出演することから逃れることが可能です。

この場合、プロダクションや制作会社との契約が被害女性が未成年の時に結ばれたものであるため、仮に被害女性が成人した後であっても「未成年者のした法律行為」という事実は消えませんから、20歳になった後に「親の同意を得ずに結ばれた未成年者の契約」として取り消すことが可能なのです(※ただし法定追認など一部例外があるので注意が必要です)。

3.プロダクションや制作会社との契約が「雇用類似の契約」と判断される場合

プロダクションや制作会社との契約が形式的に”委託契約”や”委任契約”の形を取っていたとしても(契約書に”営業委託契約”や”委任契約”などと記載されていたとしても)、プロダクションや制作会社と被害女性との関係性が「雇い主(使用者)」と「従業員(労働者)」と認められるものだったり、契約の態様が「雇用」と認識できるようなものである場合には、その契約は「雇用類似の契約」と判断されることになります(※1※2※3)。

契約が「雇用類似の契約」と判断されれば民法の”雇用”に関する規定や労働基準法、労働契約法といった”労働法”に基づいて契約を解除することができますので、出演を強制するプロダクションや制作会社から逃れることが可能です。

例えば、プロダクションや制作会社との契約が「〇年〇月から〇年〇月まで」というようにその契約期間が定められている場合には民法第628条によって契約を解除することが可能です。

【民法第628条】

当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。(後段省略)

この点、民法第628条には「やむを得ない事由があるとき」と規定されていますので、AVの出演を強制させられている女性側に「やむを得ない事由」があるかという点が問題となります。

しかし、AVへの出演は『プロダクションや制作会社等が指定する男性と性行為等をすることを内容とするもの』であることから出演者である『女性被害者の意に反してこれに従事させることが許されない性質のもの』と考えられますから、出演を嫌がる女性に対して”違約金”や”損害賠償金”などの請求をチラつかせて無理に出演させる状況があるとすれば、そのような強制から逃れるために契約を解除しなければならない「やむを得ない事由」があったと判断されるべきでしょう(※過去の裁判例でも同様に判断されています(※1※2※3))。

そのため、AVへの出演を強制させられている状況にある女性は、その契約が「雇用類似の契約」と判断される限り、民法第628条に基づいて契約を解除し、AV出演を強制させられている状況から逃げることができると考えられます(※1※2)。

なお、契約の期間が「〇年〇月から〇年〇月まで」というように定められていないような場合にも民法第627条に基づいて契約を”いつでも”一方的に解除することができますので、契約期間が定められていない場合も、契約期間が定められている場合と同様に、プロダクションや制作会社に対して契約解除の通知をすることによって、一方的に契約を解除することが可能と考えてよいと思われます(※契約期間が定められていない場合は”やむを得ない事由”のあるなしに拘わらず”いつでも”契約を解除できます)。

【民法第627条】

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。

以上に説明したように、契約が「雇用類似の契約」と判断することができる場合は民法628条や627条の規定に基づいて契約を解除することが可能です。

では、どのような場合に被害女性とプロダクションや制作会社との間で結ばれた契約が「雇用類似の契約」と判断されるされるのでしょうか?

この「雇用類似の契約」の判断基準については過去の裁判例(※1)から次のような事由がある場合はたとえ契約書に”委託契約”や”委任契約”と記載されていたとしても「雇用類似の契約」と判断できると考えるべきですので(※2)、具体的にどのような関係性や契約の態様があれば「雇用類似の契約」と言えるのか個別に考えていくことにしましょう。

① 「女性に事実上個々の出演依頼に対する認否の自由がない」場合

女性に事実上個々の出演依頼に対する認否の自由がない場合とは、たとえば女性側が出演を拒んでいるにもかかわらず出演を強制されているような場合が代表的です。

女性側が、プロダクション(又は制作会社)から指定される作品に出演することを拒否できないような状況に置かれている場合は、その女性はプロダクション(又は制作会社)の「指揮命令下」に置かれていると判断されるでしょう。

そして、そのような「指揮命令下」に置かれ「使用従属関係」にある場合には、「雇い主(使用者)」と「従業員(労働者)」との間に結ばれる”雇用関係”と同じような関係と認められることになりますので、このような状況で結ばれている契約は「雇用類似の契約」として民法その他の”雇用”に関する法律(労働法)の規制対象となるものと考えられます。

”事実上”出演を拒否できない状態であれば「出演依頼に対する認否の自由がない」と判断されますので、たとえばプロダクション(又は制作会社)から執拗に出演するよう説得されたり、会議室等に監禁されて出演を迫られたり、「違約金が発生する」とか「出演を拒否するなら損害額を支払え」などと金銭の支払いを求められたり、その他暴行や脅迫するなどの行為によって出演を強要されているなどの状況がある場合は、たとえ”形式上”は契約書に「女性は出演を拒否できる」というような条項が記載されていたとしても、”事実上”は女性側がその出演を拒否できない状況に置かれているといえますから、この「出演依頼に対する認否の自由がない」に該当すると判断され、前述したように「雇用類似の契約」として契約を解除することができると考えてよいでしょう。

あくまでも「”事実上”女性がどのような状況に置かれているか」という点が重要となりますので、契約書に記載された”形式上”の文言に拘わらず、女性が「出演したくないけど出演を拒否できない」と思うような精神状態に置かれているのであれば、そのような女性とプロダクション(又は制作会社)との関係性は「雇用類似の契約」と考えて差し支えないのではないかと思います。

② 「プロダクション(又は制作会社)が、女性の業務(出演時の演技やプレイなど)につき一般的な指揮命令を行っており、業務の内容・提供する場所・時間などもプロダクション(又は制作会社)が指定している」場合

女性と契約するプロダクションや制作会社が、女性の業務(出演時の演技やプレイなど)につき一般的な指揮命令を行っていて、その業務の内容やその業務を提供する場所、その撮影時間などもプロダクション(又は制作会社)が指定しているような場合にも、その女性はプロダクション(又は制作会社)の「指揮命令下」に置かれていると判断することができます。

そして、前述したように女性がプロダクションや制作会社の「指揮命令下」に置かれ両者が「使用従属関係」にある場合には、”雇用関係”と同じような関係と認められることになりますので女性とプロダクション(又は制作会社)との間で結ばれている契約は「雇用類似の契約」として民法その他の”雇用”に関する法律(労働法)が適用できると考えられるでしょう。

この場合も契約書の形式的な文言ではなく、契約の実態に即して考えるべきものと思われますので、仮に契約書に業務(出演時の演技やプレイなど)や作品の種類・撮影場所・時間等について女性側の意思を尊重する旨の文言が記載されていたとしても、①の場合と同様にプロダクションや制作会社の方で全て決定しているような場合には女性とプロダクション(又は制作会社)との関係性は「雇用類似の契約」と考えて差し支えないのではないかと思います。

契約を解除(または取消)したら違約金や損害賠償金を支払わなければならないか?

以上のように、プロダクションや制作会社と契約したのが未成年で親の同意を受けていなかったという状況であれば「未成年者の法律行為」として取り消すができますし、未成年者で親の同意を受けていた場合や、成人・未成年に関係なく「雇用類似の契約」と判断できる状況にあるような場合には「雇用契約の解除」という形でAVへの出演契約を一方的に解除(解約)することができます。

この点、AVへの出演契約を解除(取消)することができるとしても、それによってプロダクションや制作会社から違約金を請求されたり損害賠償を請求されたりしないのか、という点が問題になります。

この点、女性と契約しているプロダクションや制作会社側は、「AVに出演するという契約をした」→「だから女性には出演しなければならない義務(債務)がある」→「それなのに契約を破って出演しなくなった」→「だから撮影できなくなったことで発生した損害を賠償しろ」という理屈で違約金や損害賠償金を請求して来るのが通常です(※法律用語ではこれを”債務不履行に基づく損害賠償請求”といいます)。

しかし、「未成年者の法律行為」として取り消した場合も、「雇用契約の解除」によって契約を解除した場合も、その契約の解除(取消)は法律の規定に基づいて有効に解除(取消)されているのですから、そもそもその解除(取消)によってそれ以後に撮影期日を迎えるAVに「出演しなければならない義務(債務)」自体消滅してしまっています。

「出演しなければならない義務(債務)」が存在しないのに、その義務(債務)の存在を前提とした「AVの撮影ができなくなったこと」によって発生した違約金や損害賠償金を支払わなければならない法律上の根拠はありませんから、仮にプロダクションや制作会社から違約金や損害賠償金を請求されたとしてもそれを支払う必要はないものと考えられます(※”債務不履行責任”の”債務”が契約解除によって消滅しているからそれを”不履行”にしても”責任”は発生しないということ)。

なお、過去の裁判例でも、AVへの出演を強制された女性が10本のAV出演契約について残り9本の撮影前に契約を解除した事案で、プロダクション側からの違約金請求(女性側の債務不履行に基づく損害賠償請求)を棄却(プロダクション側の敗訴)したものがあります(※1)。

※ただし、撮影日直前の解除(取消)については違約金や損害賠償金が発生するという考え方もあるようです。※3

プロダクションや制作会社の主張に丸め込まれないように

以上のように、AVへの出演を強制させるような契約は、法律の規定に基づいて解除したり取り消したりすることが可能です。

(過去の裁判例でも同様の判断がなされています※1

AVへの出演を拒否するとプロダクションや制作会社から「違約金を請求するぞ」とか「損害賠償するぞ」とか「訴えるぞ」とか言われるかもしれませんが、それはAVへの出演を承諾させるための単なる「脅し」でしかありません。

仮にプロダクションや制作会社から違約金や損害賠償金を裁判で請求されたとしても、前述したような理由で違約金や損害賠償金の請求は認められないと考えることができますから、そのようなプロダクションや制作会社の言動に惑わされないようにすることが必要です。

AVへの出演を強制させられている場合はすぐに弁護士に相談すること

AVへの出演を強制させられている場合に一番重要なのは、すぐに弁護士に相談することです。

プロダクションや制作会社に「AVには出演したくありません」と申し入れた場合、プロダクションや制作会社の担当者は「契約を破るのか!」「違約金を請求するぞ!」とか脅してくることが多いと思います。悪質な業者なら自宅まで押しかけて出演を承諾させようとするかもしれません。

中には「とりあえす、事務所で話しようよ」とか「解約の書類にサインしてくれたら出演しなくていいよ」などと優しい言葉で事務所に誘い込み、女性が事務所を訪れた途端態度を豹変して脅迫や監禁などによってAVへの出演を強制させる事例も多くあるようです。

ですから、AVへの出演を強制させられている時点ですぐに弁護士事務所に相談に行き、適切な対処を取ることをまず第一に考えるべきです。

プロダクションや制作会社の人間と会ってしまうと脅迫や監禁によって相手方の思うように強制させられてしまうだけですから、たとえ担当者が「会って話がしたい」と言ってきたとしても、弁護士が同席している場合でない限り会うべきではないと思います。

AVへの出演を強制させられる被害は、専門家が介入すれば必ず解決できる問題です。

もし、実際に被害に遭っている人がこのページを読んでいるのであれば、すぐに弁護士に連絡をしてもらいたいと思います。

(※弁護士の中にも上記のような解決方法を示した裁判例があることを知らず、相談しても「契約したんなら出演しないとだめでしょ!」などとバカなことを言う不勉強な先生がいるかもしれませんが、そのような弁護士はごく少数です。AVの出演強制問題は必ず解決できる問題であると思いますので、バカな弁護士にあたってもあきらめたりせず、まともな弁護士を探して相談するようにしてください。)

※なお、弁護士に相談すると費用の支払いが心配になるかもしれませんが、国が運営する日本司法支援センターの民事法律扶助制度を利用すれば費用の立替制度(減免や免除の制度もあり)を利用することも可能です。

また、全国の弁護士会では無料の法律相談も行っていますし、弁護士事務所に直接相談に行って弁護士事務所で民事法律扶助の申込みをすれば弁護士の相談料が無料になる場合もありますので費用の心配は無用です。

AV出演強制被害に関する相談先

日本弁護士連合会

※法律相談のご案内のページ → http://www.nichibenren.or.jp/contact.html

※全国の弁護士会相談センター → http://www.nichibenren.or.jp/contact/consultation/legal_consultation.html

参考文献

認定NPO法人 ヒューマンライツ・ナウ Human Rights Now
http://hrn.or.jp/
※ポルノ・アダルトビデオ産業が生み出す、女性・少女に対する人権侵害 調査報告書(pdf)→ http://hrn.or.jp/wpHN/wp-content/uploads/2016/03/c5389134140c669e3ff6ec9004e4933a.pdf

新・判例解説Watch
http://lex.lawlibrary.jp/commentary/property.html
※AV出演の拒絶を理由とする損害賠償請求が否定された事例(同志社女子大学助教 鈴木尊明:pdf)→ http://lex.lawlibrary.jp/commentary/pdf/z18817009-00-031161370_tkc.pdf

【脚注】

※1)東京地裁平成27年9月9日(東京地裁平成26年(ワ)第25782号)

※2)ポルノ・アダルトビデオ産業が生み出す、女性・少女に対する人権侵害 調査報告書(認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ)27頁~29頁

※3)AV出演の拒絶を理由とする損害賠償請求が否定された事例(同志社女子大学助教 鈴木尊明)


スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする